水にちなむ地名、とくに川にちなむ所を集めてみました。

地名は「人の生活」から生まれたもの。

はじめは、地形に基づく地名が作られました。その土地の特徴をもとに特定の場所を表したのです。

例えば、広い原野を「大原」や「広野」と呼び、河川のそばを「川辺」「河辺」と呼ぶといった形。

これらは自然地名とも言える地名ですね。

そして、人間のいろんな営みに基づく地名が作られるようになります。

例えば、神社のそばを「宮前」、大きな村落を「大村」と呼ぶような形。

これらは文化地名とも言える地名ですね。いずれも、大部分は古代史と何らかの関わりをもっていると言えます。

地名の数は、無限にあります。

日本全国の「小字」程度の土地の名称は、約1千万件とも言われています。

それ以上の細かい地名や俗称は1億を超えるとも。ものすごい数ですよね。それらの中には、歴史や文化を知る手がかりとなる地名があります。

今回は、その中から「水」に関連する地名をいくつかご紹介します。

 

川の地名-川、河、江、瀬、淵、袋

古代の生活において川は不可欠のものです。村や町、都市は川のそばに作られるのが例でした。

古墳時代には井戸掘りが始まり、川のないところでも生活できるようになっていったようですが、それまでは、川から飲料水や稲作用の水を得ていたわけですね。

ただ、稲作用に必要な大量の水は井戸や自然の湧き水だけでまかなう事は難しいです。

なので、古代の価値観として、川への感謝とその水が枯れないことを願いつつ生活をしていたことあります。

こうした背景をもとに、多くの集落の住民は、自分たちが利用する川にまつわる地名をつけてきました。

大きな川のそばに住む集団は「大川」の住民と名乗り、小さな川のそばの皆さんは「小川」の名前を使うわけです。

せまい平地で同じ川を利用する集落が2~3個あれば、「川上」「川中」「川下」といった地名が生まれます。

幅の広い川にまつわる地名には「河」が多く用いられます。さらに広い川は「江」。からの「大江」とか。

 

川の流れがよどんで深くなったところを「淵」と言います。

反対に、川が浅く流れの早いところが「瀬」。

川が出会うところが「あいかわ」で、「合川」「会川」「愛川」といった地名。

また、川を渡るところが「越え川」で、それが「川越」や変じて「鯉川」になったりします。

 

渡し舟を使う淵には「恋淵」の地名が残されていたりします。

川魚がよく取れるように願って「合川」が「鮎川」に、「越川」が「鯉川」などに変わっていくのです。

 

少々話が逸れますが、水田を作りやすい川沿いや低湿地帯の原野を拓いて、そこに集落をつくってきました。

なので、こうした住居の周りは「○田」の地名が生まれ、その周辺に広がる原野には「○野」「○原」といった地名が付けられました。

 

有名なところで、東京の「池袋」をご紹介します。

これは、池があったことにもとづくというより、川にちなむ地名だそうです。

「袋」は大きな川が洪水でつくった遊水池を表す地名。

荒川の袋で、池のような大きなものがあったところが「池袋」というわけです。

池袋近くに「沼袋」という地名がありますが、これも沼のように大きな袋を表す言葉です。

 

袋と呼ばれる遊水池は、洪水のときに自然にできます。

これが洪水のあと、徐々に本流におさまっていく。

あちらこちらにこうした袋があり、それが水位上昇の余分な水の受け皿になったおかげで、大洪水の発生をおさえていたわけです。

池袋などの袋がなければ、江戸の住民は荒川の洪水に悩まされていたはずです。

護岸工事のあと、こうした袋は次第に姿を消し、袋は低湿地帯になり、そこに家が立ち並ぶようになっていったわけですね。

 

もう一つ、「江戸」もご紹介します。

江戸の起源は、そこが隅田川の東京湾への出口にあたっていたところから。

大きな川(江)の出口(戸)という意味。これが江戸です。

ちなみに、徳川家康が幕府をひらいたとき、江戸を「徳川」など自分の家ゆかりの地名に変えることもできたはずですが、家康は自分を関東新参者と考え、もとからの住民が愛した地名「江戸」を重んじたそうです。

これもとても面白い事例ですね。

 

まとめ

地名は「人の生活」から生まれたもの。

はじめは、地形に基づく地名(自然地名)ができます。そして、人間のいろんな営みに基づく地名(文化地名)が作られるようになります。

地名の数は、無限にあると言え、ただ、いずれにしても古代の価値観や考え方が色濃く投影されていると言えます。特に水に関わる地名には、そこに自然の地形を表したものから、人々の願いや暮らしが投影されている地名まで、たくさんの例があります。

是非、ご自身が棲んでらっしゃる地名、または近くの地名について、その背景や歴史を調べてみていただきたいと思います。きっといろいろな発見があるはずです。

参考文献『地名の由来を知る事典』東京堂出版

 

コチラも是非!おススメ関連エントリー

「水の信仰」の歴史と概要まとめ|水の神様や歴史、全国の主な事例をまとめてみました

2016.07.15

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA