水と瑞。どちらも「みず(みづ)」で同じ「読み」。水の持つ性質をもとに深いところでつながってマス

今回ご紹介するのは、「水と瑞」のお話し。

「水」も「瑞」も、どちらも同じ「みず(みづ)」と読みます。

少し深く掘ってみると、そこには日本神話における「日本を褒め讃える呼び方」にもつながっていく深~いお話が。いずれも水の持つ性質をもとに深いところで繋がっています。

さっそくご紹介していきましょう。

 

水と瑞

水と瑞の言葉の意味

まず、言葉の意味から。

  1. 水「みず」・・・水素と、酸素の化合した流動体。
  2. 瑞「みず」・・・うるはしく清らかなること。みづみづしきこと。

『ことばの泉』落合直文(大倉書店、1898)より一部抜粋・加筆

②は、普段なかなか耳にしない言葉ですが、「瑞(みず)」と読むのは今でも人名や地名で使われています。

まさに、「瑞」の「みづみづしきこと」は、水と関連が深い概念ですね。

瑞祥としての瑞(みず)

ところで、

「瑞」という言葉、

  • 漢和辞典では「しるし」「めでたい兆候」などの意味で説明されます。
  • 国語辞典では「美しく生気があってみずみずしいこと」といった説明。

「めでたい兆候」については、神話の時代までさかのぼります。

天が王の聖徳に感応して瑞祥を現すという「天人感応思想」に基づく「奇瑞」が『日本書紀』をはじめとする六国史に数多く記録されています。

その内容を初めて規定したのは、延喜5年(905年)、醍醐天皇の命により撰述が始まり、延長5年(927年)に編纂された『延喜式』の巻二十一治部省式です。

例えば、

  • 大瑞・・・慶星けいせい、慶雲けいうん、黄真人おうしんじん、河精かせい
  • 上瑞・・・三角獣、白狼、赤羆せきひ、赤熊せきりゅう
  • 中瑞・・・白鳩、白鳥、蒼鳥、白睾せきたく
  • 下瑞・・・秬秠きょくひ、嘉禾かか、芝草しそう、華平かへい

といったランクと奇瑞が、、、

美称としての瑞(みず)

一方、「瑞」という言葉が他の語の上に置かれて「瑞~」の形で使われる時は、「美称」としての意味、つまり「褒め讃える」意味になります。

日本でこのような使い方がなされるよういなったのは、『日本書紀』(養老4年(702年)が最も早く、天照大神が伊弉諾尊、

伊弉冉尊に日本を治めることを命じる場面が初見。

天神、伊弉諾尊、伊弉冉尊に謂かたりて曰はく「豊葦原の千五百秋の瑞穂の地あり。汝往きて脩くらすべし〔巻一神代上 第4段一書第一〕

とあり、日本の別称の由来を伝えます。

「瑞穂」が具体的にどんなものなのか?については、後代の『延期式』の記述によって、下瑞に区分されている「嘉禾かか」が該当します。

或いは異なる畝に同じ頴かい(稲の穂)、或いは茂り連なる数穂、或いは一稃ふ(もみがら)に二米なり

五穀の長と言われ、王の聖徳が地に及べば出現するというもの。

つまり「豊葦原の瑞穂の国」が意味するところは、「水生植物である葦が生い茂って、みずみずしい稲の穂が豊かに実っている国」であり、それを「日本の美称」とする考え方として定義しているのです。

瑞穂と水穂

ちなみに『古事記』(和銅五年(712年)編纂)では、「瑞」の字は使われず、「水穂」と表記されます。

天照大御神のみことも命以ちて、「豊葦原之千五百秋之水穂国は、我が御子、正勝吾勝勝速日天忍穂耳命の知らす国ぞ」と言因さし賜ひて、天降したまひき。〔上巻〕

とか。

この違いは、

『日本書紀』では、国の正史としての位置づけから、国を褒め讃える「瑞祥」としての表現を採用。

一方で、『古事記』は、天皇家の私的歴史書としての位置づけから、国を褒め讃える的な表現が機能しないため。

漢語の「水」は、古代、飲み水としての「水」の意味のほかに、川の水や湖・池・沼などの地勢における「水」のことを意味していました。

なので、正格漢文の『日本書紀』では「水穂」ではなく「瑞穂」が選ばれたのだと思います。

オモシロいですね。

まとめ

水と瑞

同じ「読み」の「水と瑞」。

そこには、「水」の性質をもとに、「瑞」の「みづみづしきこと」、「瑞祥」の「めでたい兆候」へ、お互いに関連が深く結び付きながら展開しているわけですね。

 

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